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里帰り 1
2006年9月1日(金)雨。
僕とてっつん(PA・STAFF/Manager)はこれまで数多くの雨を止ませて来た。
特に心配もせず、6時半から大雨の中荷物を車に積み込んだ。7時きっかりに少年山荘出発。
琵琶湖大橋を越えて湖岸道路を一路米原へ。
まず最初の目的地は朝食、
『番場の忠太郎食堂。』
この時間ここのお店に入ってくるトラッカー達は今が夕食。
「朝定食と生ビール!」
の声が店内に響く。彼らはここにトラックを止めて、恐らく今日の夕方までゆっくりと眠るのだろう。
僕らと全く逆さまの生活時間を垣間見る。
朝定食は、みそ汁、烏賊の刺身、目玉焼き、おひたし。
腹ごしらえを済ませて北陸自動車道に乗る。ようやく9時、まだ雨が降っている。が、気にしていない。
目指すは高岡IC.。ここで明日のライブを主催を引き受けてくれた、ギタービルダーの嶋さんと待ち合わせている。
車内は世間話、馬鹿話、飽きたらBanjoを弾く。
このShort Neck
Banjo、今日は車内演奏用だけに持ってきたわけではない。
6年前、八尾を訪れた時に書いた
『風の盆に恋をして』
はこのBanjoから生まれたのだ。
この旅の大きな目的は、この曲と僕の思いを、このBanjoと共に
『里帰りさせてやる事』
なのだ。
Night Walk・Jerusalem Ridges・Old Rip・Turkey in the
Strawなど弾きまくるうちに高岡に到着。
駐車場に止まった白いステーションワゴンの嶋さんとご挨拶。11時。
早速、明日のライブ会場である
『ぼくのほそ道』
へ。ご挨拶・下見を兼ねた昼食。マスター手打ちの蕎麦を御馳走になる。
「この後テレビ見てますから!明日ラジオも聞いてますよ!」
の声援に送られて富山市内にあるチューリップテレビへ。
その時点で、いつの間にか雨は上がり富山は炎天下。ご覧下さい、僕らのこの実力。
スタジオに入る前に、お隣にあるFM富山にアポなしご挨拶。
『桜の島の風の中にいる』
をプレゼン。こんな訪問の仕方で掛けて貰えるのかしら?
さあさ、もう時間が迫ってます、スタジオに急ぎましょう。
今回のテレビ出演を決めて下さった森さんとも初対面、電話で話した印象と違う巨漢。
あちらもそう思われたかも知れませんが、その辺りには触れずに控え室へ。
女性ディレクターの長沢さんから今日の段取りを聞かせて貰うと、時間が短いので生演奏は無し、お話のみとの事。
「Banjoを抱えて居ないと落ち着きませんから。」
と、Banjoを持って出演し、紹介されたときにArkansas
Travelerを弾きながら出て行ったのであります。
on the airはまずまずの出来、けどテレビはやっぱ苦手であります。
ピーカンの富山を車は一路ホテルへ、宿の手配をしてくれた山本君に遭遇。
この時期、すなわち風の盆に時期に、富山で宿を取る事などあり得ないのです。
ちなみに何処のホテルで訪ねても、3年先くらいまで予約が入っているそうです。恐るべし風の盆!
チェックインを済ませて早速夕食。食べてばかり。食べ盛り。
駅前の魚料理やさんへ。行く途中に
『シネマ通り飲食店街』
を発見。駅前の細い路地の奥に、ピンク映画館と小さなお宮さんがある飲食店街。このカオスが大好き。束の間35年前に浸る。
暖簾をくぐると気分は日本酒。
『越中懐古』
しっかりした酒。好き。
白エビ刺身・白エビ唐揚げ・赤烏賊刺身・岩垣・鯖きずし、中でもげんげ(幻魚)と言う深海魚の干物、
カジキマグロの昆布〆はちょっと関西では味わえない。
一番旨かったのがなんと、鮎。頭からいけるサイズで、ワタが甘い!驚きの旨さ!多分今年一番の鮎だろう。
まだまだ飲みたいけど、この後の事を考えるとそうも行かない。結構酔っている僕たちの話を嶋さんはニコニコと聞いてくれている。
聞くと全く飲めないのだそうだ。
てっつんも運転をしなければならない時は一滴も飲まないで居てくれるのだが、根が好きな事を知っているばっかりに遠慮しいしい飲む事になる。
ツアーにこんな人が居てくれると安心して飲める。けど今日はそこそこにして、さぁ風の盆へ!電車で行くか、バスで行くかを迷っていると
「僕が車で送り迎えをします。」
「そんなん、悪いしいいですよ。」
「大丈夫ですよ。今日は一日付き合うつもりでしたから。」
「そうですか。」
何処までいい人なの?嶋さん!それにしても結論を出すのが早い!もう一寸遠慮することを覚えなくては。
6年ぶりの八尾。車が入れるのは体育館までで、そこからはシャトルバス。
「今年は全然混まずにここまでこれました。結構空いてますよ。」
と、嶋さん。しかし、その夥しい大きさの駐車場は既に満車。野球が4つほど出来る河川敷に車を停めて町中に向かう。およそ15分。
バスを降りると土砂降り。
「てっつん、一寸止むように言うてくれるか?」
「一寸だけ待ってください。」
われわれはこんな事を言いながら、およそ10分で雨を止ませる事が出来る。
さぁ、毎年より空いているとはいえ、この中から木場大輔を捜し出さねば。
『今年は越中八尾にご縁ができ、来月1日から3日の深夜の町流しに参加させていただくことになりました。上新町の谷井さんという胡弓奏者の方がお世話されている、
酔芙蓉の会の皆様に混ぜていただいて、風の盆本番の三日間、深夜1時から3時頃、上新町周辺の路地を流すことになるようです。』
と、聞いている。
上新町に差し掛かったところで和紙やさんを発見。
6年前、雷に打たれたように
『風の盆に恋をして』
が降りてきたのはこの辺り。その時の状況が体中を駆けめぐる。心地よく懐かしい。
「紙代好きやし、ちょっと見ていこう。」
4年ほど前、八尾和紙を100枚くらい別漉きして貰った事を思い出した。
この町には思い出が多すぎる。
店内を見てからご主人に
「上新町に鼓弓を弾かれる方は居られますか?」
「いっぱい居てますよ。一流から三流まで。」
「谷井さんという方らしいのですが・・・。」
「その人なら超一流の人です。この先にある『つどい』と言う喫茶店に行ってみてください。そこに行かれたら『あけみちゃん』によろしく伝えてください。」
「ありがとうございます。」
で、
『つどい』
へ。聞くと大輔は西町の友人宅にいるそうな。
教えて下さった上品そうな奥さんに
「『あけみちゃん』って居られますか?」
「私です。」
「さっき紙屋さんで道を聞いたら、ご主人がよろしくと仰ってました。」
で、両者苦笑い。
西町で大輔に会う。いつも会っている仲間でも、旅先で会うと、思い入れのある町で会うと、なぜか心が騒ぐ。
「雨は上がったものの、この湿気では楽器がたまらんなぁ。」
「和楽器は湿気に弱いですからねぇ。」
「これではBanjoでもあかんよ。」
と相変わらずの世間話
「今日の夜流し見ていってくださいね。」
と彼は簡単にいった。僕も簡単に頷いた。
それを見に来たようなところもあるから当然だが、今時間は7時半。夜流しは午前1時から。
隈無く歩いても1時間半程の小さな八尾の町、しかも人混みの中を5時間半も彷徨う事になった。
ようやく上新町に踊り手・囃子方が集合し始めた頃、我々の疲れはピークに達していた。
「大輔が弾くのを見たら、すぐに引き上げるから。」
と本人に伝える。その約束も何処へやら、格好の良さに魅せられ、気が付けば時刻は二時半を廻っていた。
嶋さんに送られホテルへ。興奮から冷めて寝始めたのは午前4時半くらいだった。
ーつづくー
