|
Banjoのひとりごと43 Banjoのひとりごと44へ |
里帰り 2
2006年9月2日(土)晴れ。
夢の中で電話が鳴っている。呼び出し音が現実だと気付くのに時間が掛かった。
「はい。」
「久保比呂誌ですが、今ホテルの前にいます。朝食を一緒にどうですか?」
何がなにやら解らないままにレストランへ、てっつんは部屋のスリッパで出てきている。
レストランには、久保比呂誌・彼のマネージャー・竹本さんご夫妻。夕べ遅くに大阪を出てきたと言う。僕らも遅かった。眠い。
到着したばかりの彼等はまだまだ元気。
「今夜八尾で会いましょうよ。」
「今夜はライブやで。」
「中村正公・多恵子さんも今晩こられますよ。」
「うん、聞いているけど・・・・・・わかった。」
朝食後彼等は八尾へ、僕はベッドへ。
1時間ほど寝たのだろうか。又電話。
山本君が東京に帰るという。パジャマのママ部屋の入り口でご挨拶。
「ありがとう。」
二度寝をする間もなくチェックアウト。
今日はラジオの生放送。その前に 富山City FMにご挨拶。
ここもアポなしで会ったが、快く迎えてくださいました。
時間があるので町中散策。なんと本日、総曲輪(そうがわ)通り辺りの駐車場は
『無料開放』
車を停めて商店街へ。まずは
『高桑熨斗店』
を発見。面白い和紙の便せんを購入。僕は紙が好きである。
「テレビに出てられる方ですよね。」
こんな時は返答に困る。確かに昨日は出たけど、そうしょっちゅう出ているわけではない。
けど明らかにこのご主人は昨日のテレビを見て、しょっちゅう出ている人に違いない、と思って居られる。気まずい空気のまま。
「はぁ、まぁ。」
と曖昧な答え。
「えぇっと。お名前は・・・ここまで出て居るんですが・・・えぇっと。」
「北・村・・・ 謙・・です・・。」
「そうそう!北村さん!北村さん!、いつも見てます。」
いちいち胸に何かが突き刺さる。きっとこんな時はにっこり笑って、握手でもして
「ありがとう!」
で良いのだろうが、どうも僕は生真面目に考えすぎるようだ。
店を出て嶋さんと会う。この辺りで昼食を食べてから北日本放送に向かう予定。
「何が食べたいですか?」
「美味しい物!」
嶋さんは友達に電話で尋ねてくれました。
「鰻はどうです。この辺りでは一番のお勧めらしいですよ。」
「良いですねぇ。(前に来た時も、美味しい鰻屋へ行ったなぁ。)」
「ここです。ここです。」
紛れもなく6年前に来たその店。食べ終わった後に、焼き方を尋ねると
「関西でも関東でもないうちのやり方です。」
と答えてくれた頑固さが美味しかったのを思い出した。
納得の昼食でした。
さぁて、目指すは高原兄さんが待つ北日本放送。
街中に建つ煉瓦造りのビルは、なかなか立派な証券会社と言った趣。
受付でPASSを貰って5階へ、スタジオとサブが全面ガラスで仕切られたかなり大きなスペース。
スタジオだけでも30坪はあるのではないでしょうか?高原さんとアシスタントの梅田さんが、軽快なお喋り。高原兄と聞けば
『完全無欠のロックンローラー』
を思い出す。が、今は父親の建築会社を継いで、社長とタレントの2足のわらじを履いているらしい。以前の誰かに似ている。
そのせいかお喋りも、妙に常識的で説得力がある。突っ張った感じは何処にもない。
同行の嶋さんは、梅田さんのファン、常のこの番組を聞いているらしい。なかなかチャーミングな女性である。
この日のラジオ出演もBanjoを抱えて。話がぽんぽんとテンポ良く進んでゆく。
Banjoひとり旅の話・富山の印象・風の盆の話・『風の盆に恋をして』を書いた時の話・そしてこの歌を里帰りさせるためにやってきた話。
そして、いよいよ曲が流れる。この曲は5分近くあるので、放送では全曲通してはなかなか掛けて貰えないのだが、この局では全曲が流れた。
曲が鳴り出すとパーソナリティの二人がじっと聞き入っている。曲の流れている間は世間話をする。
が常識のようになっているこの世界で、珍しい人たちだ。見習おう。
曲が終わると二人は言葉重たげに話し出した。
「いい歌ですねぇ。」
この言葉に嘘はない。何故なら二人の目が潤んでいる。
高原さんは感受性が強く、かなりの衝撃を感じてくれたように見受けられた。
今夜のライブのお知らせをしておしまい。10分ほどと言われていた放送予定は20分近くになっていた。
高岡市内にある今夜の宿にチェックインをして再び
『ぼくのほそ道』
ログハウス風のこのお店は、2階が練習スタジオのようになっている。
20畳ほどの部屋にドラムセット・アンプ・音響設備等がいっぱい置いてあり、壁一面にギターがぶら下がっている。
恐らくマスターが音楽好きで、と思いきやマスターではなくマスターの友人のバンドが練習場所として使っているらしい。
なんと気の良いマスターなんだろう。
その機材をお借りして、てっつんがセッティングを始める。完了してリハーサルを始める。
今日はオープニングアクトの女性シンガーがまだ来ていない。
スタッフの中から
「メインの人より遅いのはどうかと思う。」
の声。僕はそんな事はどちらでも良いのだが、会場に入った時に挨拶して貰えなかったのには戸惑った。
もちろん僕の
「お疲れさま。」
にも反応はなかった。
テレビのレポーターをやっていたというこの子、富山の子でありながら風の盆を知らなかった。
挨拶が出来ないのは当然だろう。時代は確実に変わっている。良くない方向に。
オープニングアクトが20分延びたので、嶋さんに
「少し短めにしますか?」
「いえ、予定通りにお願いします。」
で、スタート。会場を見ると、30人の予定であったところに65人ほどのお客様。嬉しい誤算である。
歌い出すとシーンとして聞いてくださる。富山の人はみんなこうなのだろうか?
ただし、話していると反応はすこぶる良い。コンサートをやっているようなライブだ。
終盤に差し掛かり、今日のこのライブへの思いを話し、夕べ行った風の盆の印象を話し、
『風の盆に恋をして』
歌い終わると拍手が鳴りやまない。
気持ちが高ぶる振り返るとてっつんの目も潤んでいる。想いを伝えていた嶋さんの目も潤んでいる。
さらに気持ちが高ぶる。絞り出すように
『この歌を里帰りさせてやる事が出来ました。ありがとう。』
いつしか、みんなの気持ちがひとつになっていました。
昨日までの疲れは何処へやら、片づけの終わった僕とてっつんと嶋さんは
中村正公・多恵子・木場大輔・久保比呂誌たちが待つ八尾の町に車を走らせていた。
友人たちと出会い、静かにおわらの流れる町並みを歩くと、この町に里帰りをしている気がした。
『風の盆に恋をして』
書いてよかった。
