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Banjoのひとりごと51 Banjoのひとりごと52へ |
春
季節はずれの苺を買った。
夕暮れの商店街を通り抜けたとき、果物屋の店先にあまりにも赤が綺麗だったから。
勿論、値段が手頃であったことも、理由の一つ。
「なんで、こんなに安いの?クリスマスの時は高くなるのと違うの?」
と聞くと
「クリスマス前には一端安くなるのです。」
らしい。はっきりした理由ではない。
いずれにしてもその赤が、僕の食欲中枢を刺激したことは間違いない。
帰り道、車の中で
「練乳も一緒に買うべきだった。」
と後悔。
頭の中には、苺の甘酸っぱさと練乳の甘さの入り交じった美味しさが刺激となり、それが口の中にまで広がってきた。
『どこかで練乳を手に入れなければ。』
が使命感となりながら、家路を急ぐ。
そこにセブンイレブン。車を停めて、僕は光の中に吸い込まれていく。
コンビニは好きではない。特に夜のコンビニは、自分がまるで誘蛾灯に集まる蛾になった様な気がする。
何故かしらあのプラスティック感覚の全てが好きになれない。
それにあの従業員の、ロボットのような対応が大ッキライである。
レジで精算をしていて、ムカムカする。
僕がコンビニに入るのは、背に腹を変えられないとき。正に今がそのときである。
口の中のイチゴミルクがそうさせている。
店内を探し回るが、練乳らしき物が見あたらない。こんな時は聞くのが早い。
が、コンビニの従業員に物を尋ねるときは覚悟が要る。
練乳を尋ねて、まず練乳の説明が必要な事が往々にしてあるから。
まず頭の中で練乳の説明を考える。
『甘いミルクで、苺を食べるときに掛ける練乳というのはありますか?』
これで良いだろう。その通りに聞いてみた。
「ハァ?レンニュウ〜?レンニュウ〜ってなんですかぁ〜?」
と来るだろうと思っていた。
「練乳ですか?少々お待ち下さい。(ちょっと探しながら)スミマセン、あいにく只今切らしております。申し訳ありません。」
二十二・三歳の従業員さんは(あえてさん付けにさせていただく。)
僕の予想に反して、きびきびとした口調で答えてくれた。
声の出し方も、アニメ声や変に甘えた声ではない。ハキハキしている。
コンビニエンスストアで(対応が良いとこちらの気分もどんどん変わっていく。)
こんな対応をして貰ったのは始めて。とても気持ちがよい。
ちょっとした事なのになんでだろう?
『コンビニの従業員はどうせこんな感じ。』という先入観で対応した自分が恥ずかしいほど。
このまま何も買わずに出ていくのが悪いような気にさえなる。
その若い女性が、誰にどんな教育を受けたのか?どんな人なのかは知るよしもないが、正に一期一会の対応であったように感じた。
「今日は練乳は諦めた!牛乳でよい。」
食べ物の場合、一端こうと決めたら変えることのない僕。珍しい。
恐らくその対応がそんな風にさせたのだろう。
「これを下さい。」
と牛乳をレジに、
「牛乳パックお一つで203円です。」
210円を渡す。
「210円お預かりします。7円のお返しです。ありがとうございました。」
「ありがとう。」
「またお越し下さい。」
完璧!
普通のお店や、百貨店でもこうはいかない。単純な僕は、
「これからコンビニエンスストアに用事のあるときは、どんなに遠くても迷わずここに来る。」
とまで思った。何故か嬉しかった。
みんながこんな風になれば、世の中必ずしあわせになるだろう。
こんな若者と出会う度に、この国もまだまだ捨てたものではない、とまで思ってしまう。
口の中の苺と相まって、春のような気分であった。
僕の気持ちの中に、今もまだ爽やかな風が吹いている。
